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頭を使うパスサッカーの妙

サッカー王国・ブラジルを舞台にしたワールドカップ(W杯)が目前に迫っています。NHKでは先日,スペイン代表であるシャビとイニエスタの特集が組まれていました。サッカーの素人である筆者が見てもその凄さは映像を通じて伝わってきます。

二人の特異性については,既にサッカー専門家の間では頻繁に語られており,実際,元日本代表の中田英寿氏も4年前のW杯直後にその意味付けを詳しく語っています(NHKリンク)。曰く「個人の技術や才能だけで勝てる時代は終わりつつある」「個人を活かすこととチームへの貢献が両立するのが強いサッカーの形」。また二人を代表チームに抜擢し,今年2月に逝去したアラゴネス監督は「小よく大を制す」と選手たちに繰り返し説いていたといいます(UEFAリンク)。

MRI(磁気共鳴画像法)を使った実験も紹介されましたが,これによると直観に基づいて行動しているときには,大脳基底核が働いているというのです。直観による行動は,反復的な経験に裏付けられるところが大きいといいます。シャビの場合,スペインリーグのカンテラ(スペイン語で「石切り場」,ユース)で培ったパス練習が基礎にありました。

ここで一つ有力な仮説として導かれるのは――パフォーマンスの質を上げるには,できるだけ質の高い経験を蓄積し,それを脳の深部に焼き付ける。教育でよく「家庭環境が大事」「良いものを浴びるように吸収するのが大事」と言われるのは一つの真理でしょう。

この番組を観ていて,頭をよぎった会話があります。

ある音楽家の方とビールで一杯やったときのこと。趣味でピアノを弾いている筆者に「いま小さい男の子を教えてるのだけど,貴方と同じように頭で弾いている!」と仰いました。また別の音楽家の方と一献した際には,某コンペティションで優勝したピアニストについて感想を述べ合っており,「実演を聴き,完成度に驚きましたが,流れがない静止画のようでもありました」と筆者が言うと,「だってあの人の音楽は,頭で構成しているから。コンクールのような場で評価されるのも尤もだよね」――ですが・・・本当の〈音楽〉は,普通の意味で言う「頭で弾い」たり,手指の敏捷性だけで弾いたりできるものではない。「頭で弾く」のは,時間を節約する近道にすぎず,本当の〈音楽〉に到達するには別の深い何かがあるはずだ。お二人の発言も暗にこれをほのめかしていたに違いありません。

少し揚げ足取りめいた締め括りになりました。気をつかわない会話の中で漏れた言葉尻を捕らえてあれこれ言うのは,無粋というものでしょう。お二人と再び語り合える日を心待ちにしたいと思います。

それにしても,現代の科学・技術共にいっそう高い知見を求めた一種の対話であり,それがサッカーのようなスポーツと融合する瞬間は素晴らしいものです。

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