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有森博さんとロシアン・ピアニズム

少し前ですが,偉才の日本人によるリサイタルに立ち会ってきました(所属レコード会社による曲目詳細→こちら)。

photo(arimori-h0524-u)

有森博さんの実演を初めて拝聴したのは,まだ私が小学生のころ,20余年前にさかのぼります。当時はデビューしたてで全国の地方ツアーも多々こなしていらしたのでしょう。筆者はおけいこ振るわず,まして演奏会も辛抱強く聴けない不肖の子どもでしたが,有森さんの独特のリズム感とほの暗さを湛えた美しい音が鮮烈に印象付けられました。当時流行りだしたトーク・コンサートの先駆けで,司会の女性に「汗が凄いですね~。緊張されてますか?」と質問を受け恐縮されていたと記憶します。

その後ながらくご無沙汰していましたが,ふとしたところでロシア音楽に注力されていることを知りました。ただし活動拠点が東京とご出身の岡山に置かれていたため,当時関西在住であった私は,実演に再び触れる機会を逸しつつ今日に至りました。

そして20年越しの再見。CDの触れ込みに超人的技巧とありますが,疲れを知らぬ強心臓そのもの。演奏スタイルは力強さを誇張したり大胆にアゴーギクをかけるというよりは,むしろ正統派で現代的,快適なテンポ感を追求するタイプとみられます。但し,プログラムは無名曲をも取り入れた専門的なもの。プロコフィエフでは見逃されがちな中期の「思考(原題は pensee(仏))」も取り上げ(初耳でした),その多面性を見事に描き出されていました。

現在は母校で教職にもあるはずが,どうやって練習時間を捻出しているのでしょう。〈クラシック音楽〉の型にはまらぬお人柄とファッション,さりげない遊び心に彩られたステージマナーも健在でした。(今回も前半は黒,後半は真紅のドレスシャツに着替えて登場されました。)

更に,以前に比べて一種濃厚な歌いまわしといえるものが加わっていました。とくに前掲のプロコフィエフで顕著だったようです。聞けば,藝大を修了後もモスクワにアパートを借り,飛行機で先生の個人レッスンを受けに通われていたとか。子どもの耳と素人の耳をつなぎ合わせた批評で申し上げれば、それは通勤留学で身につけたロシアン・ピアニズムの成果であるように思いました。

ここで二つ動画のご紹介も。

有森さんがロシア特にラフマニノフとの出会いについて音楽ジャーナリストの取材に応えています。

また今回のプログラムに対する意気込みを語っています。

カーテンコールには,「スーパーの買い物袋」に入ったお酒(一升瓶かウォッカの角瓶?)を贈られ(ロシア専門ともなれば,やはり酒もお強いのか),嬉々としてアンコールに応えた選曲がラフマニノフ「コレルリの主題による変奏曲」。一夜の終りを飾るに充分な難曲ながら,ここで取り上げる。しかし誰も退席するお客さんはいません。

話しは変わりますがこの春,自宅のONKYOコンポは連日,ロシア音楽に唸りをあげています。どうやら筆者の血もまたロシアの大地を欲しているようです。

◎有森博さんウェブサイト
http://www2.odn.ne.jp/~ckj28560/
※レコード会社(fontec)のご紹介ページhttp://www.fontec.co.jp/artist_data/2000/01/hiroshi-arimori.htm l

◎ピロシキ会
http://pirosikikai.blog.fc2.com/
門下生演奏会の情報。その名の通り,打ち上げはやはりロシア料理で…?

◎長瀬賢弘さんウェブサイト
http://nagaseyoshihiro.com/
定期的に共演もされている模様。特にプロコフィエフへ集中的に取り組んでおられるようです。

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1件のコメント

  1. itaru.saito より:

    ところで,有森さんの出身地・岡山での活動については,以下のブログ記事をご紹介することで代えたいと思います。
    http://akogold.exblog.jp/18213922/
    フルーティストとのことですが,楽器や分野を超えた感動のほどがうかがえます。

    ところで少し視野を広げますと,ここには日本のクラシック音楽事情(とりわけ実演)をめぐる一断面がリアルに表れています。東京や大阪などの都心であれば演奏会は毎晩選ぶほどあり,凝った選曲の一夜にも人が溢れることさえあるとききます。
    地方での開催がためらわれる理由は様々にあるかもしれません。聴衆が集まらない…会場まわりの世話や広報の協力者がいない…。よって日本の音楽家は拠点を都心に置きつつ,出身地やゆかりの深い地方で出演する活動スタイルが多いように思われます。
    ですが実際のところ,本当は良い演奏会を楽しみにする地方在住の人々も多いはずです。本ブログもまた,それらのご紹介を通じて少しでも変化のお役に立てればとおもっています。

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